暮らしの中にオリーブを。

オリーブオイルが値上がりする理由~日本国内におけるオリーブオイルの値上げニュースについて~

2024.03.19


こんにちは。
今回は、オリーブオイルの価格事情についてお話したいと思います。


2024年3月現在、オリーブオイルの値上げのニュースが相次いでいます。

▼日清オイリオ、オリーブオイルを最大80%値上げ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2872J0Y4A220C2000000/
▼J-オイル、オリーブオイル最大8割値上げ 欧州干ばつで
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC058B80V00C24A3000000/


弊社も昨年、価格改定を行っており、お客様にご負担をおかけしてしまうことを大変心苦しく感じるとともに、ご理解と変わらぬご愛顧をいただいていることに心より感謝いたしております。


近年の日本における物価高騰は様々な品目にわたっていますが、なぜオリーブオイルが特に値上げ幅が大きいのか?
そのことについてお問い合わせを頂くことも増えており、オリーブを扱うものとして、お話できればと思います。




1. オリーブオイルの世界シェアと日本の事情


価格高騰の原因に深く関係しているのが、オリーブオイルがどこで作られているかについてです。

オリーブオイルと言えば『イタリア』のイメージがあるかもしれませんが、実は世界で一番オリーブオイルを生産する国は『スペイン』です

その割合は2021年のデータで世界の総生産の約44%であり、2位のイタリアの約10%を大きく上回っています(2021年IOCデータ。ヨーロッパ全体に対しては実に65%をスペインが産出しています)。
他の生産地としてはギリシア、トルコ、チュニジアなどが上がりますが、いずれもスペインの生産量には遠く及びません。


ちなみに日本でも、一番古くからある小豆島や岡山に加え、近年では静岡や九州などオリーブの生産地が増えてはいますが、世界全体からみると1%にもなりません。

つまり、国内に流通するオリーブオイルの大部分は海外からの輸入に頼っているという現状があります。
弊社で扱うオリーブオイルも、国産のエキストラバージンオリーブオイルうしまど、エキストラバージンオリーブオイルうしまどスペリオルを除けば大部分がスペイン原産です(スペイン自社農園産品を含む)



2. 値上げの原因① : スペインにおけるオリーブの大不作について


そんな中、世界のオリーブオイル価格に最も大きな影響を及ぼしたのが2022年、2023年のスペインにおける2年連続のオリーブの大不作です。

まず2022年、歴史的なオリーブの不作、例年の半減以下とも見積もられる大不作がスペイン全土を襲いました。
原因は、大干ばつ(降雨量が極端に少ないことによる水不足)です。

オリーブは4月(日本では5月)に花を咲かし、10月頃に果実が太り収穫時期を迎えます。
花が咲く頃から果実が太るまでの夏の間は適度な日照と降雨が必要なのですが、2022年はスペイン全土で全くと言って良いほど雨が降りませんでした。

その結果、スペインの貯水池の水位が平均50%になる程の水不足が起こり(出典 : https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2XD08Q/)、オリーブに必要な水が全くまかなえない事態が起こったのです。

極端な水不足が起こると、オリーブも植物であり自身の生命を維持する必要がある以上、オリーブは花や果実に水分や養分を回すよりも生命維持にそれらを活用します。
その結果、オリーブの花は落ち、わずかに実った果実も夏の間に落ちてしまう事態が起こります。
これがスペイン全土で起こった結果、前記のような大不作が起こったのです。

私たちの会社でも、毎年スペインに社員が赴き、スペイン自社農園の収穫や、スペインで良質なオリーブオイルをいつも提供いただいている農園を訪ねて回ります。

しかし2022年当時、スペインを訪れたときに言われたのは

「50年以上オリーブを作っているが、こんなにオリーブがとれない年は初めてだ」

「今年の収穫はmal(スペイン語で”悪い”)どころじゃない。cero(スペイン語で”ゼロ”)だ」

という、苦渋の言葉でした。
ずっとオリーブに携わってきた生産者ですら経験したことの無い不作です。

先にご紹介した通り、世界最大の生産国がスペインです。
そのスペインで大不作が起こったことにより、オリーブオイルの価格は世界規模で大高騰を起こします。

近年は特にその健康への効果からオリーブオイルの需要が世界中で高まっていたため、供給不足懸念は大きく、オリーブオイルの値上がりはものすごいスピードになりました。
「2023年の収穫は普通に戻るはずだ。そのときまでの辛抱だ」
私たちを含む、オリーブに携わる企業や人はそう思い、果実の成らない木のお世話を続けました。

しかし2023年、その期待とは裏腹に、2年連続の大不作が起こりました。
原因は2022年と同じく干ばつです。
2023年も2022年と同程度、つまり平年の半分を大きく下回る量しか、オリーブオイルの生産ができなかったのです。

その結果起こったのが、オリーブオイル価格の更なる高騰です。
あまりの高騰に、スペインでは農場からオリーブの果実を盗む窃盗団が現れるようになり、スーパーマーケットではオリーブオイルを通常の棚に置くことを止め”鍵付きのケース”に入れるところも出てきています。

これがオリーブオイルの値上げの主要因であるスペインでの不作、それも2年連続の不作についてのお話です。
しかし、日本においては更に価格が上がる要因が存在します。



3. 値上げの原因② : 円安について


その要因のひとつが円安です。
円安とは円の価値が落ちることで、最近のニュースでも物価高騰の原因として報道されているのを耳にされる機会が多いと思います。

円安の原因を考察することは専門家の方々にお任せするとして、オリーブオイルもスペインをはじめ海外からの輸入が主な以上、この円安の影響を悪い方向に受けています。

例えば、2020年頃には1ユーロの価格は約120円程度でした。
スペインで1ユーロのものが、120円で買えた、ということです。
それが、2024年現在では160円程度で推移しています。
つまり、2020年スペインにおいて120円で買えたものが、2024年現在では160円、つまり3割以上多くかかります。

前述のようにオリーブオイルの価格自体がヨーロッパにおいて上がったことに掛け合わせで、この円安、つまり円の価値が落ちることで更に日本におけるオリーブオイルの価格が高騰しているのです。



4. 値上げの原因③ : 海運状況について


更に悪いことに、現在は海運の状況も刻一刻と変わっています。

コロナによる混乱の名残や、近年ではスエズ運河の船舶攻撃も問題となっています。

▼スエズ運河ルートを回避!フーシ派の船舶攻撃 世界の物流混乱 https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2024/02/02/37458.html

オリーブオイルを運ぶ船も例外では無く、結果として海運運賃の高騰や、船が予定通り着かない、といった問題も起きています。
海運以外の方法、例えば飛行機をつかった空輸という方法もあるのですが、現実的には海運より更にコストがかかってしまいます。


それらもまた、日本におけるオリーブオイルの値上げの一因となっています。


5. まとめ


ここまでお話したことをまとめます。

現在起こっているオリーブオイル値上げの大きな原因として
「世界最大の生産国であるスペインにおいて2年連続で歴史的大不作が起こったこと」
これが世界的な価格高騰の主要因になっています。

更に日本においては
「円安により輸入する際の円価格が上がっていること」
「海運の乱れ」
も価格に影響を及ぼしており、これらの理由により、近年ニュースで見られるオリーブオイルの値上げが起こっているのです。



6. 最後に


もしここまで読まれてきて、オリーブオイルを値上げすることの弁解に思われたのであれば大変申し訳なく思います。

私たちも、皆さまの生活を豊かにする一助になりたいと思い、1949年の創業以来オリーブをお届けする仕事をして参りました。

そしてオリーブの価格が大きく上がることは決して望んではおらず、可能な限り価格が上がらない努力をすることが企業としての責任と考えております。

しかし、近年のオリーブをとりまくあまりにも大きい環境の変化に直面する中で、それに対するご説明をすることも必要と思い、本記事を公開するに至りました。
ご理解を賜れましたら幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

日本オリーブ株式会社/牛窓オリーブ園公式オンラインショップはこちら
会員登録で初めての購入から使える 500ポイントプレゼント●会員登録はこちら●

SNSをフォローして最新情報をゲット!

Facebook
Instagram
Twitter
YouTube

人気のある記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

瀬戸内のエーゲ海、牛窓オリーブ園へ

瀬戸内の美しい島々を見渡す丘にある「牛窓オリーブ園」がわたしたちの活動拠点です。約2,000本のオリーブが茂る園内にはハーブ園や幸福の鐘の丘などがあり、家族でくつろげる観光スポットとしても知られています。山頂にあるショップには当店で販売されている化粧品、食品、オリーブの鉢植えなどが並び、展望台からは周囲の景色をぐるりと360度眺めることができます。初夏に咲く白いオリーブの花、秋に色づくオリーブの実、そして年に一度、大勢のお客様でにぎわう収穫祭と、四季折々の表情を楽しんでいただけます。

オリーブの木
Wordpress Social Share Plugin powered by Ultimatelysocial